「MUハンドジェル R」 PROIONアルコール洗浄ハンドジェルが怪しい話〜ウイルス不活化に必要なエタノール濃度も紹介〜

最近ドラッグストアで見かけるようになった「MUハンドジェル R」 PROIONアルコール洗浄ハンドジェルが怪しい話です。

「MUハンドジェル R」 PROIONアルコール洗浄ハンドジェルが怪しい

実家近くのドラッグストアで販売されていたアルコール配合のハンドジェル。

妻実家のアルコールが底を尽きたということで目に止まったのでみてみたのですが、どうにも胡散臭い。

アルコール成分の配合量が記載されていないんですよね。

成分表示はエタノールが先頭に表記されてはいるものの、水が成分の二番目に表示されていたりと少しおやっと思う成分内容。

記載の順序

挙げられる記載法としては、下記の 4 つがあります(表①~③参照)。

①全成分を配合量の多い順で記載する。

②配合量の多い順に記載して、配合成分 1%以下は順不同で記載する。

③着色剤以外の成分を配合量の多い順に記載し、その後に着色剤を順不同に記載する。

④着色剤以外の成分を②に準じて記載した後、着色剤を順不同に記載する。

出典:薬事法ドットコム

成分の表示方法にはルールがあり、成分の配合量の多い順で記載せねばなりません。

この商品では水の表記が二番目にあることから、少なくとも水が50%以上含まれていることはないでしょう。

しかし、あまり聞かないメーカーであることに加えて価格設定が高額な点が気になるところ。

昨今の状況に乗じてウイルス不活化効果があると誤認させたいような匂いがぷんぷんとします。

そもそも消毒用エタノールが1000円程度で購入できるのに(在庫があれば)、税込二千円を超えるという価格設定が怪しすぎます。

最近では酒造メーカーが販売開始している菊水酒造の「アルコール77」は同じ容量でアルコール濃度が明記されているにもかかわらず1200円程度で購入できますからね。

需要が高いので価格に関しては妥当な相場なのかもしれませんが、胡散臭さは否めません。

「MUハンドジェル R」や「PROIONアルコール洗浄ハンドジェル」、「メイクアップ アルコール」などで検索みてもこの商品が記載されたホームページやブログがヒットしません。

ヒットするのは別のタイプの「アルコール70%配合」と明記された別商品のみ。

先にアルコール濃度が高いものを販売して検索に引っかかるようにしてから、本命のアルコールハンドジェル風のこの商品を売ろうという戦略なのでしょう。

嘘はついていませんけどね。

他アルコールジェルの表記

有効成分

エタノール(C2H6O)76.9~81.4vol%

添加物

リン酸、グリセリン、アラントイン、ミリスチン酸イソプロピル、グリセリン脂肪酸エステル、
パラオキシ安息香酸エチル、
N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-アルギニンエチル・DL-ピロリドンカルボン酸塩、
ヒドロキシプロピルセルロース

https://www.tepika.net/plus/

アルコールジェルの代表格といえばやはり手ピカジェルでしょう。

手ピカジェルの成分表記は上記の通りです。

水が成分表記の二番目にはありません。

日経ビジネスより

小橋教授によると、最も適しているとされるアルコール濃度は70~80%程度。100%近いものであれば、消毒・除菌効果はあるものの、「揮発性が高いため、ウイルスを除去しきる前に蒸発してしまう可能性がある」という。逆に濃度が下がると「それだけ効果は下がってくると考えられる」と説明する。厚生労働省は同省ホームページ「新型コロナウイルスに関するQ&A」の中で、「アルコール消毒(70%)などで感染力を失うことが知られています」と表記している。

 実際に売られている商品を調べてみた。健栄製薬「手ピカジェル」は(76.9~81.4vol%)、サラヤ「ハンドラボ 手指消毒スプレーVH」は(76.9~81.4vol%)のように、確かに上記の範囲のエタノール濃度が表記されている。ところが、量販店や通販で売られている一部の商品には濃度の記載がないものがあった。その商品の1つを手に取ってラベルを見ると「アルコール洗浄タイプ」と記載されているが、その「アルコール」の文字の傍らには「※1」と注記があり「清涼剤・溶剤として」と補われている。つまりアルコールは消毒用途で入っているわけではないのか――。

 記者は製造販売元に問い合わせてみた。

 電話口の担当者に尋ねると「うちの商品のアルコール濃度は58%です。化粧品として販売しており、『除菌』や『殺菌』といった文言は使っておりません」と説明。同社HPには「新型コロナウイルスに効果があるかどうかは、現時点では他社様の多くの商品と同様、確認できておりません」との注意文も掲げている。アルコールが含まれる以上、感染防止に効果がないとは言い切れない。だが、感染リスクを下げる効果は、濃度が明記された商品に比べると劣る可能性が高い

 同社はこの商品について「最近販売を始めた」という。「お客さまがどのような用途で購入されているかは把握していない」と話し、あくまでも消毒液を売っているわけではないという姿勢だった。確かにパッケージにも「洗浄」の文字はあっても「消毒」の文字はない。記者は販売意図を尋ねようと食い下がったが、最後は多忙を理由に電話を切られてしまった

 東京都など7都府県に緊急事態宣言が発令され、各家庭や職場での新型コロナウイルスに対する危機感は高まっている。そうした中で、効果が判然としない商品は今後、続々と登場してくる可能性がある。小橋教授は「自身が求めている効能と、商品の成分や効果が合っているかを冷静に確かめる姿勢が必要だ」と指摘する。

 そもそも、外出機会が減る中で「基本的には、せっけんを使ってしっかりと手を洗い、十分な水で流せば、感染防止の効果は得られる」と小橋教授。「水が使えないなど特別な環境にいる場合は別だが、何が何でもとアルコール消毒にこだわる必要はない」とも話している。

日経ビジネス:品薄続くアルコール消毒液、類似品どう見極める?

コメントにてTomさんより日経ビジネスの参考になる記事を紹介いただきました。

ありがとうございます。

内容としてはやはりアルコールの濃度の表記がない類似品が巷に出回ってきているということ。

今回取り上げた「MUハンドジェルR」はそもそも販売元のメイクアップ株式会社のHPにて商品ページはありません。

そのため、アルコール濃度自体もわからない状態になっています。

まぁ、胡散臭いですよね。

商品ページがないものを信用しても良いものなのだろうか。

最近ではドラッグストアのお酒コーナーにて、国内酒造メーカーがアルコール消毒液と同じ濃度のアルコールを含有した製品を厚生労働省の助言の元に販売を開始してくれています。

MUハンドジェルRよりも1.5倍容量の多いアルコール濃度80%のウォッカは1900円、同じ500mLのアルコール77は1180円と妥当な価格。

500mLでアルコール濃度不明なMUハンドジェルRの価格は1980円。

胡散臭い上に便乗商法となるとこのメーカーの製品は買いたくなくなると思ってしまうのは私だけでしょうか。

買うなら、我々消費者のために立ち上がってくれた国内酒造メーカーの製品に限ります。

ウイルス不活化に必要なエタノール濃度

ウイルス不活化に必要なエタノール濃度に関して気になったので調べてみると博士課程の学生さんの論文を発見しました。

なかなか面白い内容だったので紹介したいと思います。

今回フォーカスする内容は新型コロナウイルス(SARS-COV-2)が属するエンベロープウイルスに対する不活化効果です。

「殺菌・抗ウイルス効果に及ぼすエタノール濃度の影響」 医療保健学研究科 医療保健学専攻 感染制御学領域 神明 朱美さん

今回紹介する論文は東京医療保健大学大学院 医療保健学研究科 医療保健学専攻 攻 感染制御学領域 博士課程の神明 朱美さんの論文です。

出典論文URL:「殺菌・抗ウイルス効果に及ぼすエタノール濃度の影響

実験に使用したエンベロープウイルス

Influenzavirus A A.pdm.2009No.48、A/FM/1/47、A/PR8、A/Tokyo/2/75、A/USSR/92/97 は

MDCK 細胞(JCRB9035 イヌ腎由来)を、Human herpesvirus 1 HF 株(HSV-HF)、Human herpesvirus 2 UW 株(HSV-UW)は Vero 細胞(アフリカミドリサル腎由来 DS ファーマ)を用いた。

http://www.thcu.ac.jp/uploads/imgs/20190605090207.pdf

実験で使用されたウイルス種は2種類7株。

  • インフルエンザA:5株
  • ヒトヘルペスウイルス:2株

コロナウイルスは含まれていませんでしたが、エンベロープを有するウイルス種ということである程度は参考になると思われます。

方法

ウイルスに対する不活化効果は、保存ウイルス液を使用し、供試エタノール 900 μL にウイルス 液 100 μL を混和し、作用時間は殺菌効果試験と同様の 10 秒に加えて 1 分とした。作用後直ち にウイルス感染価を測定した。対照として、リン酸緩衝液を使用した。ウイルス感染価の測定は、 ウイルス液と供試液の混合液を維持用培地で 10 倍希釈系列を作製、その 10 μL をあらかじめ感 受性細胞を培養した 96 well plate の所定の well に接種した。37°Cで 1 時間、ウイルスを吸着さ せ、維持用培地 100 μL を添加し 37 °Cの CO2 インキュベーターで培養した。CV A7、CV A16、CVB5、FCV/F9、HSV-HF、HSV-UW、Influenzavirus A は 3~5 日後に、Ad は 7~10 日後に 出現した細胞変性効果を観察し、ウイルス感染価(TCID50/10 μL)を求めた。これら一連の操 作をエタノール濃度ごとに 2 回実施した。ウイルス不活化効果の評価は、ウイルス感染価より 3.1.1.と同様に指数減少値を算出し、LR≧3 [指数減少値(log10 reduction:LR)]を満たすことで評価した。

結果

http://www.thcu.ac.jp/uploads/imgs/20190605090207.pdf

ウイルスに対する作用時間 10 秒でのエタノールの抗ウイルス効果を表 6 に示す。。エ ンベロープウイルスでは、36 v/v% のエタノール濃度で検出限界以下を示すウイルス株は HSV- HF と HSV-UW であり、45 v/v%ですべての Influenzavirus A に対しても検出限界以下となった。

http://www.thcu.ac.jp/uploads/imgs/20190605090207.pdf
http://www.thcu.ac.jp/uploads/imgs/20190605090207.pdf

作用時間 1 分では表 7 に示すように、ノンエンベロープウイルスでは作用時間 10 秒の結果 より低濃度の 45 v/v%でも CVA7 と CVA16 を除くすべてのウイルス株で LR≧3 を示した。エン ベロープウイルスでも、10 秒の作用時間の結果より低濃度領域で検出限界以下を示し 27 v/v%で HSV-HF と HSV-UV が、36 v/v%では Influenzavirus A A.pdm.2009 No.48、A/PR8、 A/Tokyo/2/75 が、45 v/v%では Influenzavirus A A/FM/1/47 と A/USSR/92/97 が検出限界以下を示した。

http://www.thcu.ac.jp/uploads/imgs/20190605090207.pdf

アルコール消毒液やアルコール消毒ジェルで注目したい実験結果は作用時間10秒での結果です。

1分間もアルコールに手を晒すことは日常生活においてありえませんからね。

10秒間での各ウイルスの不活化効果とエタノール濃度を表にまとめます。。

アルコール濃度/ウイルス種インフルエンザAヒトヘルペスウイルス
36%×
45%

同じエンベロープウイルスの中でも不活化できるエタノール濃度は異なる結果。

勉強になります。

結論

エンベロープウイルスでは、表 6 に示すように、評価基準としている検出限界以下となるエタノールの最小濃度範囲の低値は 36 v/v%であり、45 v/v% 以上のエタノール濃度では、すべてのウイルス株に対して抗ウイルス効果を示した。

1 分間の作用では、表 7 に示すように、最小濃度範囲の低値は 27 v/v%とより低濃度で抗ウイルス効果を示し、ノンエンベロープウイルスとエンベロープウイルスでは異なる挙動を示した。

ノンエンベロープウイルスは、核酸とそれを取り囲むカプシドと総称されるタンパク質の殻で取り囲まれた構造である 16)。

エンベロープウイルスは、さらに、脂肪、タンパク質、糖タンパク質からなる脂質膜であるエンベロープを有する構造となっている。

http://www.thcu.ac.jp/uploads/imgs/20190605090207.pdf

まとめ

新型コロナウイルスに焦点を当てると必要なエタノール濃度は推定50%以上となりそうです。

消毒用エタノールを手に入れることが最も理想的であることに変わりはありません。

日本薬局方で消毒用エタノールの濃度は76.9~81.4 v/v%に規定されているので短時間でもウイルスの不活化作用を示してくれます。

しかし、入手できたアルコールが希釈が必要な無水エタノールであった場合は50%に調整してみるのも一つかもしれません。

合わせて読みたい記事

最新情報をチェックしよう!
NO IMAGE

Gadget Nyaa

手軽に少し、ハイテクな暮らしを