[熊本大学] 不妊の原因にかかわる遺伝子を発見

熊本大学が不妊の原因にかかわる遺伝子を発見し、卵子や精子の形成に必要な細胞分裂のメカニズムを解明しました。

研究内容

熊本大学発生医学研究所の石黒啓一郎准教授のグループは、卵子や精子の形成に必要な染色体の減数分裂をコントロールする遺伝子を発見し、「MEIOSIN」(マイオーシン)と名付けました。これまで、卵子や精子が作られる際の減数分裂を引き起こすメカニズムの詳細は明らかになっていなかったため、今後の不妊治療などの生殖医療の進展につながる可能性があります。
 本研究成果は、令和2年2月6日(木)11時(米国東部時間)に、世界的権威のある米国Cell Press社が刊行する科学学術誌「Developmental Cell」のオンライン版に掲載されました。本研究は文部科学省 科学研究費助成事業 新学術領域研究(配偶子産生制御、配偶子インテグリティ、生殖エピゲノム、非ゲノム情報複製)の支援を受けて実施したものです。

【ポイント】
卵子や精子が作られる際の減数分裂の“スイッチ”として働く遺伝子を特定し、これを減数分裂開始因子「MEIOSIN」(マイオーシン)と名付けて公表しました。
MEIOSINは、からだ全体の組織・器官で通常行われる体細胞分裂から減数分裂への切り替えに働く司令塔の役割を果たすことを明らかにしました。
MEIOSINに障害がおきると卵子や精子が作られず不妊となることを明らかにしました。


【研究の内容】
 全身の組織・器官では、通常「体細胞分裂」と呼ばれる細胞分裂によって延々と細胞の増殖が行われます。一方、卵巣や精巣では「減数分裂」と呼ばれる特殊な細胞分裂が行われて卵子や精子が作り出されます。いずれも細胞分裂でありながら、体細胞分裂は同じ染色体(遺伝情報)を倍加させてからそのコピーを均等に分裂することにより元と同じ2つの細胞を作り出すのに対して、減数分裂は染色体の数が元の半分になることにより母方・父方の遺伝情報だけを持つ卵子や精子を作り出します。卵巣や精巣では、はじめは通常通りの体細胞分裂を行って細胞増殖が行われ、ある一時期を境に減数分裂が行われます。しかしながら、体細胞分裂から減数分裂に切り替わるメカニズムの詳細は不明であり、減数分裂のコントロールは不妊症治療などの生殖医療とも直結する重要な問題でありながら、世界的にも長年解明されない課題でした。
 熊本大学発生医学研究所の石黒啓一郎准教授のグループは、生殖細胞が卵子や精子を作り出す過程で減数分裂がどのように起きているのかを調べるために卵巣と精巣内に含まれるタンパク質の解析を行いました。質量分析法*1を駆使した解析により、減数分裂の“スイッチ”として働く遺伝子を特定し、これを減数分裂開始因子「MEIOSIN」(マイオーシン)と命名しました。この MEIOSINは、卵巣や精巣内で減数分裂が始まる直前の特定の時期にだけ活性化するという極めて珍しい性質を持っていることがわかりました。そこで、ゲノム編集*2によりマウスのMEIOSINの働きをなくすと、オスもメスも減数分裂が起こらなくなるため、卵子や精子がまったく作られず不妊となることが判明しました。さらにそれらのマウスの卵巣・精巣を詳細に解析することにより、MEIOSINが減数分裂の発動に必須の働きをしており、卵子や精子の形成に関わる重要な遺伝子であることを解明しました。

【用語解説】
*1:質量分析法: 未知のタンパク質の種類を解析する解析手法。株式会社島津製作所の田中耕一氏がこの技術の開発でノーベル化学賞を受賞したことでも知られる。
*2:ゲノム編集:遺伝子のDNA配列を人為的に書き換えることのできる新手法。遺伝子を自在に編集できるため、マウス受精卵にこの操作を行うと、生まれてくる子世代で特定の遺伝子の働きを調べることができる。

【論文情報】
論文名:MEIOSIN directs the switch from mitosis to meiosis in mammalian germ cells
著者:Kei-ichiro Ishiguro, Kumi Matsuura, Naoki Tani, Naoki Takeda, Shingo Usuki, Mariko Yamane, Michihiko Sugimoto, Sayoko Fujimura, Mihoko Hosokawa, Shinichiro Chuma, Minoru S.H. Ko, Kimi Araki and Hitoshi Niwa
掲載誌:Developmental Cell
DOI:https://doi.org/10.1016/j.devcel.2020.01.010

https://www.kumamoto-u.ac.jp/daigakujouhou/kouhou/pressrelease/2019-file/release200120.pdf

この発見は非常に不妊治療の進展に寄与する可能性がある画期的な研究です。

  • 子宮内膜の調整
  • 排卵誘発
  • 黄体補充による早流産の防止
  • 顕微授精

現在の不妊治療のメインどころは詳しくないですが、ざっくりいうとこんなイメージ。

基本的には卵胞を大きくする。なおかつ妊娠維持が望める子宮の環境を整えることで妊娠の成立を目指します。

しかし、不妊の原因の約1/3は男性側に問題があることをみなさんはご存知でしょうか?

その中でも精子が作られていない無精子病の患者の場合は精子バンクに頼らざるを得ません。

今回の熊本大学の研究はこの無精子病の患者への治療の光となるかもしれません。

今後の研究が進み、可愛い赤ちゃんがもっと産まれてこれる時代が待ち遠しいですね。

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